店長おすすめの一枚 2003年8月 |
ザップ・ママ/ア・マ・ゾーン
曲目 |
今月もまたまた女性コーラス・グループです。 コーラス・グループだったと言うべきなのかな? ザップ・ママは90年にベルギーで結成されています。 当時はリーダーのマリー・ドルヌを中心とした5人組のポリフォニー・グループ(コーラス・グループ)でした。 中央アフリカのピグミーの和声・ルワンダの伝承歌・南アフリカのズールーコーラスをベースに、スワヒリ語・ウォロフ語・英語・フランス語の詞をアカペラ・グループとして歌っていました。 91年にファースト・アルバム「ZAP MAMA」を発表。 93年にはデヴィッド・バーンのルアカ・ポップ・レーベルからアメリカ盤が発売され、彼女達の知名度は一気に全世界レベルとなり、同アルバムはビルボードのワールド・ミュージック・チャートで19週連続一位を記録しました。 翌94年にはセカンド・アルバム「Sabsyslma」を発表。 そして97年には転機となる「7」を発表。 それまではアフリカの伝統的な物にソウルやゴスペルをミクスチャーさせ、アカペラのスタイルでヨーロッパ的に洗練させていました。 「7」からはアカペラ・スタイルを止めると共に、グループだった物をマリー個人のユニットとし、ヒップホップ、レゲエといったモダンな音楽への接近を見せています。 ただ個人的には、「7」でその方向性が成功しているとは言い難く感じていた。 そして99年に発表されたのが今作。 マリーの試みは見事に花開いたと感じました。 モダンでありながら伝統的な物を感じさせ、まさに「ZAP MAMA」でしかない音楽になっています。 時々思うのですが、モダンなものを取り入れたり、他のジャンルの音楽や楽器を使ったりした方が、そのジャンルの持つ本来の「音」「匂」「空気」が浮かび上がってくると思うのですがどうでしょう? アフリカのミュージシャンがエレキ・ギターを自分達の音楽に取り入れた時、アメリカ的・白人的になるのではなく、よりアフリカ的な匂いがたちこめてきたのも不思議なものです。 あの音・匂いはアフロ・ミュージックにしか出せないものですし、それ以前の音楽よりもよりアフリカ的に感じたりします。 レゲエにしても、それまでのスカにロック的なものを取り入れ、元々コーラス・グループだったウェイラーズによって表現された物はまさしくジャマイカ的な物だと思います。 話がそれましたが、モダンな物を取り入れる事により、マリーの中にあるアフリカ的・ピグミー的な物が輝いているように感じます。 ここまで書いてマリー・ドルヌの事にふれておきます。 ベルギー人の父、ザイール人の母の間に生まれ、幼い頃の64年にベルギー領だった頃のコンゴで起きた暴動に巻き込まれ白人の父親が死亡。 この時暴動から逃れる為に森に隠れていた家族を救ってくれたのが、ピグミー族だったそうです。 この時のピグミー族との生活から彼女はピグミー音楽・ピグミー的な物を身につけたのではないでしょうか。 このページを書くにあたり、ザップ・ママの全てのアルバムを店で聞きなおしていたのですが、丁度店で販売中の「7」をかけていると店内に居た20代の女性が「今かかっているのは何ですか?」と声をかけてきました。 アルバムを見せると「これを下さい。」と買っていかれました。 僕の文章ではこのグループの素晴らしさの100分の1も伝えられていないんでしょうね。 買っていかれた女性は当店の常連と言うほどでもありませんし、一般的な普通の女性だと思います。 そういった方が、たまたま入った店で知らないグループのCDを聞き、気に入り買って行くなんてなかなか素敵じゃないですか。 音楽、そしてザップ・ママにはそんな魅力が有りますよ。 騙されたと思って聞いてみて下さい。 |