店長おすすめの一枚 2003年1月 |
グナワ・ディフュジオン/バベル・ウェド・キングストン
曲目 |
ここ数年気に入っているのが世界各国の女性ヴォーカルグループとフランス在住アラブ系移民の音楽。 今回は後者を紹介します。 フランスの歴史などは詳しくは無いのですが、サッカーを見ればわかるとおり移民が凄く多い国みたいです。 フランスはワールドミュージックの発信地(不毛の地はアメリカ)などと言われたりしますが、移民が多い事がその一番の要因でしょう。 植民地の問題と関係があるんでしょうが僕には難しい事はわかりません。 リーダーはアルジェリア系の人ですがメンバーは北アフリカからの亡命者・フランス人等と様々。 通常アラブ系・北アフリカ系のグループというと同じ民族だけでまとまる事が多いようですがフランス人も入っていたりして少し変わっています。 このCDを聞く以前に知っていたアルジェリア・北アフリカの音楽と言いますとアルジェリアのライ・モロッコのグナワといったところ。 やはりこちらもフランス経由で日本には入ってきていたと思います。 どちらも好きなんですが日本に居ると情報が非常に少ない。 本国では何が流行っているのかさえ全くわからない状況でした。 このアルバムを見つけたのは多分2000年の終わりくらいでした。 パルコの中のCDショップ。 時々しか行かないんですが行くとワールドミュージックのコーナーはジックリ見ます。 まず目に付いたのが「オルケストル・ナシオナル・ド・バルベス」の「En concert」。 何処かで見たことのあるジャケットで気にしているとその横にあったのがこのアルバム。 二つのバンドはライバル関係にあるらしく、POPにビートルズとストーンズになぞらえたコメントが書いてありました。 今まで何度も「〜のビートルズ」「〜のストーンズ」とゆうコメントには騙されましたが今回も騙されてみる事に。 珍しく騙されませんでした(笑)。 先に見つけたONBがビートルズでこちらがストーンズらしいのですが、もうそんな事はどうでもいいです。 同じ時期に見つけライバル関係とはいえ音楽的には全く違った事をしています。 アルジェリア現状を踏まえたメッセージ性を強く持ちながら、音楽的にはモロッコのグナワをベースとしてレゲエ、ヒップホップ、カリブ、ロック、ブルーズ等をミックスさせた感じです。 他のジャンルの音楽の美味しいところだけを持ってくるのではなく、自然と混じり合っていて面白いんですよこれが。 メンバーはジャンルの意識無く色んな音楽を聴いていたんじゃないかな。 リーダーのアマジグ・カデブがヴォーカルを取るがなかなか素晴らしいヴォーカリストです。 このアルバムは彼らにとって2枚目のアルバムでアルジェリアの町バブ・エル・ウェドとジャマイカのキングストンがタイトルに。 とはいえ聴いた感じではレゲエを強く感じさせるのは3曲くらいで、後はグナワを基本としたミクスチャー音楽ですが。 アラブ語で歌われているようですが現代のロック・ポップスを聴いている人には違和感無く聴けると思います。 言語の違いがかえって新鮮で面白いかもしれません。 ライナーノーツを読んでいるとアルジェリアって結構複雑な歴史・民族背景があるんですね。 このページを書くにあたりインターネットで調べてみたんですが難しかった。 アルジェリアは国家政策で言語のアラブ語化統一が70年代になされているんですが、そんな事をしたら非アラブ語民族とは国内で紛争が起きますよね。 アマジグの父ヤシーヌは「アルジェリアのランボー」と呼ばれた有名な詩人らしいのですが、息子につけた名前の アマジグ(Amazigh) はベルベル人・カリビア人(非アラブ語民族)の言葉で「自由人」を意味するそうです。 自分の息子に使ってはいけない言葉をつけるとは凄い人です。 反政府主義で永久革命派の父ヤシーヌは87年にフランスへ亡命。 アマジグは一年遅れて16歳の時にフランスへやってくるんですが、一年後に父親は他界。 アマジグのアラブ語使用に関して一部のカリビア人から「Amazigh」の名に反する裏切り行為と批判を受けているそうです。 あらゆる原理主義を否定した父とそれを継承した息子。 日本に住んでいる僕には全く想像がつきませんが、自分の向かうべき方向をしっかり自覚しているんでしょうね。 フランスにはこういった独自の歴史を背負った移民がたくさんいて、独自の文化・生活圏を築いているようです。 そうした中から伝統的な音楽と様々な物が混ざり合った独自な音楽がたくさん生まれているんでしょうね。 シャンソン以外のフランスもチェックして下さい。 |