店長おすすめの一枚 2003年10月 |
バンド・ダ・ルア/ブラジリアン・ハーモニー
曲目 |
毎月1枚ずつ紹介していて紹介したいアルバムはたくさん有る。 時事的にネタがあれば別ではあるが毎月どのアルバムを紹介するかは頭を悩ませるところ。 直ぐに決まる事もあれば、書き出してからやめる事もかなり有る。 書き出しが上手くいかなかったり、思い入れを文章に出来なかったりする為である。 今月紹介するアルバムは数日前に実際にあった出来事から紹介する事にした。 大好きなアルバムであるが書き出しが見つからなかった作品である。 土曜日の昼間で学生さん風のお客さんが3組と常連の外国人の方が店内にいる。 一組のお客さんがレディオヘッドのアルバムを試聴。 すこしして「もういいです。」と一言。 試聴用のCDを止めディスクを入れ換えていると外国人の方がカウンターにCDを置く。 その彼は月に2度ほど来て、日本人の流行歌をシングル・アルバム併せていつも30枚ほど買っていかれる。 今回もそれくらいの枚数があった。 それくらいの枚数を袋から出し、盤を入れ、ビニールに入れ、お会計をするとかなりの時間がかかる。 作業をしていると滅多に有ることではないが、レジに行列が出来てくる。 急ぎながら作業をしていると、先程のレディオヘッドの試聴をした仲間が先程の試聴の曲に対してか、今かかっている曲に対してか何かを話している。 順に会計も済んでいき先程の彼らの番。 ベックをカウンターに差し出す。 レディオヘッドとベックでは想像できる範囲。 袋から出していると一人が「今かかっているのは何ですか?」と質問をする。 「このCDです。1930年代に活躍したブラジルのコーラス・グループですね。」と言いながら今回紹介するアルバムを見せる。 「超格好いいですね。これいくらですか?」と返答が有る。 正直ビックリした。 音も古いし二十歳前後の人が気に入るとは到底思えなかった。 「これは僕が店でかける為に置いてある物で店で販売する物ではないんですよ。」 と説明をする。 少し話をすると特別にブラジルの音楽が好きなわけでもないし、特に知っている事が有るわけではなかった。 でも、ジャンルとか関係無しに音楽を聴こうとする姿勢は正直嬉しいですね。 こうゆうきっかけを与えてあげるのも中古盤屋の仕事かなーとも思いますね。 この「バンド・ダ・ルア」というグループ、本国ブラジルでは左程評価が高いグループではないらしい。 しかし音楽史の中では重要な役割を果たしている。 ブラジルの歌姫カルメン・ミランダのアメリカ進出に同行したのがこのグループ。 レコードの売り上げだけで言ったら後のボサノバ勢の方が売っているんだろうが、40年代初頭と70年代初頭の音楽ビジネスのスケールの違いを無視して考えてならないと思う。 ハリウッド映画に出演したりショウビジネス全般として考えた場合、ブラジル人音楽家としての最高の成功者はカルメン・ミランダでしょう。 そのカルメンの全盛期の録音の多くに関わり、カルメンの死と共に解散してしまったのがこのグループ。 30・40年代にはブラジルには多くのインストゥルメンタル・コーラス・グループが存在しました。 しかしこのバンド・ダ・ルアがユニークでモダンだったのはアメリカの音楽のコピーもしていた事。 当時ブラジルでコーラス・バンドはカーニバルのバンドとしての面しかありませんでしたが、バンド・ダ・ルアはアメリカのミルス・ブラザーズのコピー等をして同時代の他国の音楽を吸収していました。 それが結果的にモダンな物として聞こえてくる要因になったんでしょう。 これを読んでいる人はブラジル音楽というと、サンバとボサノヴァしか浮かんでこないと思いますが、ボサノヴァは60年代に生まれた物でバンド・ダ・ルアのメンバーがムーブメントの火付けに一役かっています。 30年代にもあった音楽というとサンバになりますが、サンバに無い洗練さとモダンさをこのグループの音楽は持ち合わせています。 「この時代のブラジルに、こんな洗練された音楽があったのか」と聴いてビックリすると思いますよ。 「洒落た音楽」という形容がぴったりのこのグループ、是非聴いてみて下さい。 |