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トニー滝谷
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2006/03/28(Tue)
TSUTAYAで借りたビデオを今朝返さなくてはならなかった。
5本1000円と少々調子に乗ってしまった。
いつになく忙しいときほど、映画がみたくなるのはなぜだろう?
昨日の夜は2本観た。
観終わると一仕事終えたような達成感があった。
意味が無いと、少し思った。
今日になって、ある映画の事ばかり考えてしまう。
「トニー滝谷」
その映画の原作が村上春樹であることも知らなかったし、
暗そうで借りたものの観るのをためらうくらいだった。
宮沢りえとイッセー尾形、その配役に惹かれ5本の中に入っていたんだ。
『トニー滝谷はトニー滝谷だった』
敗戦後生まれた彼は、『これからはアメリカの時代だから』と、
父親と親交があったアメリカ人のファーストネームから名づけられた。
母親はすぐに亡くなって、父親はトロンボーン抱えて旅に出てしまった。
『父親は父親には向いていなかったし、
トニーもまた、息子には向かなかった』
トニーは一人だった。
ずっと一人だったから一人が寂しいとも思わなかった。
大人になって、仕事をして、トニーは恋をした。
彼女には恋人がいたけれど、
彼女はトニーと結婚した。
トニーは幸せだったけれど、独りになる恐怖を知った。
そして妻は、死んでしまった。
美しい洋服や靴を部屋中に残して。
小説を読んでいるような映画だった。
トニーはアシスタントを雇い、妻の残した衣装を着せる。
そう、ここだった。
TSUTAYAでこれを手にしたとき、この一説が気になっていた。
卑猥な感じがした。
けれど、そんな自分が浅はかだったと今は恥じている。
映画の終わりは意表を突かれたし、喉がつっかえてしまった。
いつの間にか引き込まれていて、
それが今まで続いていたんだ。
考えたいことはいくつもあるし、
ただ画だけが浮かんだりもした。
ふと、
昔、恋人とした話を思い出す。
関係ないけど、思い出す。
恋人が他人と入れ替わってしまったらどちらを愛せるか?
彼の答えは、外見だった。
『トニー滝谷』は暗い映画ではなかったし、
配役も他には考えられない。
こんなに時間差で攻められたのは初めてかもしれない。
意味が無いなんて事は、ない。
カナ